こんにちは。
Jolly Phonicsのトレーニング受講者のぴっぴです。
前回は「フォニックスとはなんぞや?」というお話をしました。
今回は「フォニックス」についてもっと詳しく深堀りしていきます。
実はフォニックスには2種類あるんだよ。
え!そうなの?
フォニックスの指導法は大きく分類して2つあります。
1つ目はアナリティック・フォニックス、2つ目はシンセティック・フォニックスです。
- アナリティック・フォニックス
(analytic phonics) - シンセティック・フォニックス
(synthetic phonics)
アナリティック…?
シンセティック…?
なんか難しい言葉が出てきた(汗)
この2つのフォニックスにはそれぞれメリット・デメリットがあります。
フォニックスを学ぶ人の年齢や学習段階・好みなどによってベストな方法は変わってきます。
学習者にマッチしないものを選んでしまうと、成長スピードが遅くなったり挫折してしまうリスクがあるので要注意。
- アナリティクス・フォニックスの特徴
- アナリティクス・フォニックスが向いている人
- シンセティック・フォニックスの特徴
- シンセティック・フォニックスが向いている人
2つのフォニックスについて理解を深めることで「その人に適した学習法」を主体的に選択し、効果的・効率的にスキルを身に付けることができます。
ぜひご自身やお子さんのフォニックス学習にお役立ていただければと思います。
アナリティック・フォニックスとは?
「アナリティック・フォニックス」は、1980年代後半から普及し始めたフォニックスの学習方法のひとつ。
アメリカで主流のフォニックスです。
日本で普及してきたフォニックスの代表的な学習法でもあります。
アナリティックは「分析的な、分解の」という意味。
「すでに知っている単語を分析・分解して綴りのルールを学ぼう」というフォニックスなのです。
単語を・・・分析?
分かりにくいよね。
実際の学習法を交えて、詳しく説明していくね。
特徴
アナリティック・フォニックスには、次のような特徴があります。
- アルファベット26文字にフォーカス
- 「A、B、C…」とアルファベット順に学習する
- 文字の「名前」と「音」を同時に学習する
- 単語を見てから音を理解する
アナリティックの教材として有名な『mpi松香フォニックス』を例に説明してみます。
mpi松香フォニックスは、1979年に創立された「英語のできる15歳を育てる」ことを理念とするスクールです。
(mpi松香フォニックス公式 YouTubeチャンネル▼▼)
「アナリティック・フォニックス」では、アルファベット26文字にフォーカスを当て、ABC…のアルファベット順に学習していきます。
mpi松香フォニックスのフォニックスソングを聞いてみてください。
このようにappleの「a」、bearの「b」、cowの「c」といった感じで、知っている単語から文字を切り取って学んでいきます。
なるほど!
だから分解(アナリティック)って呼ばれるんだね。
そう。
単語の中の音を「分析する」という意味でもあるよ。
たとえば「a」の音を学ぶときは、「apple」「angry」「ants」などの知っている単語を並べ、
共通しているものはなにかな?
そうか、「a」という文字は「ア」と読むのか!
といった感じで分析して、音のパターンの認識を深めていきます。
単語の「最初の文字」と、それに続く「母音」に分割して教えます。
「m」を学ぶときは、まず「man」「milk」「mother」などの単語を見せます。
その共通点を分析して、「m」の文字は「ム」という音なんだ、というようにすべての文字の音について教えていきます。
単語から音と文字の関係性を「分析」していくんだね。
こちらの動画をご覧いただくと、イメージが湧きやすいかと思います。
cat、sat、matのように共通の音がある単語で練習していくのも、アナリティック・フォニックスの特徴です。
「atはアトと読む」というルールを認識すると、似たスペルの単語も読めるようになりますね。
またアナリティック・フォニックスでは、文字の「名前」と「音」を同時に学習します。
次の動画では、Sの名前は「エス」で、音は「スー」であることを説明しています。
メリット
「アナリティクス・フォニックス」のメリットは、フォニックスのルールが定着すれば、知らない単語や忘れた単語でも推測して読み進める力がつくことです。
「アナリティクス・フォニックス」は単語ありきのメソッドです。
単語の中の音を分析していくので、文字の音とともに「ことばの意味」も確認でき、語彙力を増やすこともできます。
デメリット
一方で、デメリットもあります。
- 「z」までの音を入れるのに時間がかかる
- 組み合わせや例外を学ぶのに時間がかかる
- 前提として語彙力がある程度必要
- 暗記に頼るためについていけない子が出てくる
ABCのアルファベット順に学んでいくので、Zまでの音を入れるのに時間がかかります。
たとえばappleのaが「ア」だとわかっても、その他の「pple」はどう読むの?となってしまいます。
また「th」や「sh」など他にも多くの音が存在するので、aからzまでの音を覚えただけでは足りません。
またある程度の英単語を知っていることを前提に文字の音を教えていくので、語彙力がある程度ないと「絵や文脈から推測して読む」ことができません。
文字の音を学ぶために、あらかじめ単語を知っておく必要があるんだね。
アナリティクスが向いている人
「アナリティクス・フォニックス」は、次のような方におすすめです。
- ある程度の語彙力がある子ども
- 英語力の下地がある大人
シンセティック・フォニックス
「アナリティック・フォニックス」は1990年代後半から普及し始めた新しいフォニックスで、近年イギリスなどで主流になっています。
シンセティックは「くっつける」という意味。
「シンセティック・フォニックス」では、個々の文字の音を組み合わせて単語にしていきます。
特徴
シンセティック・フォニックスには、次のような特徴があります。
- 音を聞いてから単語を理解する
- 「A, B, C…」順ではなく「S,A,T…」順に学習する
- 文字の「音」を先に学び、文字の「名前」は後から
- 暗記に頼らず自分の力で読めるようにする
シンセティックの教材として有名な『ジョリーフォニックス』を例に説明してみます。
ジョリーフォニックスは1987年に設立されたイギリスの出版社の教材で、世界100カ国以上で児童向けの英語学習に用いられています。
シンセティックフォニックスでは、「ABC…」のアルファベット順ではなく、英語の中で使われる頻度の高い文字から「SAT…」という順番で学習していきます。
Jolly Phonicsではまずはじめに、よく使う42個の基本の音を覚えます。
その42音を、こちらの動画で聞いてみてください。
Jolly Phonicsには、42音を覚えるためのオリジナルフォニックスソングがあります。
テンポアップの可愛い歌だね。
1つ1つの音を学んだら、学んだ順に組み合わせて単語として読んでいきます。
たとえば/c/ はc、/a/ はa、/t/ はtというように英語の「音」と「つづり」の関係を指導し、それをすぐにくっつけて「cat」と読めるようにしていきます。
次の動画をご覧ください。
なるほど。
c(ク)、a(ア)、t(ト)と個別の文字の音を組み合わせてcatと読んでるね。
Jolly Phonicsでは多感覚を重視しています。
子どもたちは目や耳や体を使って楽しく英語を学びながら、読み書きの力やネイティブのような綺麗な発音を身につけていきます。
メリット
「シンセティック・フォニックス」のメリットは、音からスペルを推測できるようになるので、単語の丸暗記から逃れられることです。
「シンセティック・フォニックス」は音ありきのメソッドです。
1文字ずつ学んだ音を組み合わせて発音していくので、ひらがなを読むような感覚で単語を読めるようになります。
英語学習初心者でも安心だね。
多感覚を使って学ぶ「シンセティック・フォニックス」はどんなタイプの子どもにも使いやすく、特別な支援が必要な子どもたちの読む力も伸びたというデータもでています。
デメリット
一方のデメリットは、「音からスペルを推測し発音できても、その単語の意味が分からない」ということが起こり得ることです。
たとえばcatと聞いて正しく書き読むことができても、「catってどういう意味?」となってしまう可能性があります。
しっかりと意味も理解していくためには、並行サポートが必要になってくるでしょう。
シンセティックが向いている人
「シンセティック・フォニックス」は次のような方におすすめです。
- ほとんど英単語を知らない子ども
- 文字の読み書きを楽しく多感覚を使って学びたい子ども
- 綺麗な発音を身に付けたい人
- 単語の暗記が苦手な人
- 特別な支援が必要な子ども
まとめ
単語ありき「アナリティック・フォニックス」と、音ありきの「シンセティック・フォニックス」。
どちらもそれぞれメリットとデメリットがあります。
日本ではこれまでアナリティック・フォニックスが主流でしたが、シンセティックフォニックスも徐々に普及し始めています。
私個人としては、音の学びを重視した「シンセティック・フォニックス」に大きな可能性を感じています。
その人に合ったフォニックスを選ぶために、理解を深めておくことは大事だね。
年齢関わらず、すべての英語学習者にとってフォニックスを学ぶことは大きな価値があります。
お子さんのフォニックス学習をどうしようか迷ってらっしゃる親御さんや、これからフォニックスを学ばれる皆さんにとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。