タイといえばマッサージ。
タイを訪れたことがあるなら、一度はタイマッサージを受けたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
こんにちは、タイ在住のぴっぴです。
バンコクのマッサージ学校に通った私が、タイの代名詞でもあるタイ古式マッサージについて詳しく紹介していきます。
(ワット・ポータイマッサージ学校の基礎コース体験談はこちら▼)
タイ古式マッサージって普通のマッサージと何が違うの?
どんな効果があるの?
いつ頃からタイで有名になったの?
詳しく知ることできっとタイ古式マッサージの見方が変わるはず。
ぐいぃーって体を伸ばしたり、ボキボキ鳴らすイメージがあるけど、詳しくは知らないなぁ。
気になるー!!
タイ古式マッサージは単なるリラクゼーションではなく、東洋医学の神髄なんです。
ではさっそく見ていきましょう!
- タイ古式マッサージについて興味がある
- タイ古式マッサージの効能を知りたい
- タイ古式マッサージの資格を取りたい
タイ古式マッサージとは?
タイの伝統医学のひとつ
実はタイ古式マッサージは、タイの伝統医学のひとつなんです。
ヨガ・指圧・整体などの流れをくむタイ古式マッサージは東洋医学がベースになっています。
指圧やストレッチで全身をゆっくりとしたリズムで施術することで、血流を良くし自然治癒能力を高めていきます。
単なるリラクゼーションじゃなくて、タイ式医学療法の1つでもあるんだね。
ユネスコの世界遺産に登録
タイ古式マッサージって世界的にも有名なの?
うん。
世代を超えて継承すべきものとして、2019年にはユネスコの無形文化遺産に登録されたんだ。
今ではタイ古式マッサージの手法を学びに、世界中からたくさんの人がタイに訪れるようになりました。
タイ古式マッサージの起源
約2,500年前にインドから伝わった
タイマッサージの起源は、さかのぼることなんと約2,500年前。
仏教の開祖であるブッダの主治医「シヴァカ師」という人物が開祖といわれています。
インドからの仏教伝来に伴ってタイにきた仏教僧集団の中のひとりがシヴァカ師だったのです。
医師だった彼は、病気やケガで苦しむ民衆に治療の一環としてマッサージを教えていたそう。
それがタイ古式マッサージの始まりだったんだ…!
ただタイ王国としての歴史は800年なので、厳密に言えばタイマッサージの歴史も700年前からとするのが妥当のようです。
そうか。ルーツをたどれば2,500年だけど、タイ王国のマッサージの歴史としては700年くらいなんだね。
インドから伝わって以降、2,500年以上の年月をかけて周辺地域の宗教や文化と混ざり合いながら、現在のタイ伝統医学が確立していったのです。
なぜタイ古式マッサージは世界に広まったのか?
タイ伝統医学は何世紀もの間、技術や手法が文献として残されることなく、人から人に口頭で伝えられてきました。
アユタヤ王朝時代にはヤシの葉に記された医学書が保管されていたけど、1767年のビルマ軍の侵攻によりそのほとんどが失われてしまったんです。
しかしその後、国王ラーマ3世によってわずかに残った医学書は、ワットポーの石碑に刻まれよみがえりました。
(参考:TTMA)
「ワットポー」って、確かタイのお寺の名前だよね?
1788年にラーマ1世によって建てられたバンコク最古かつ最大の仏教寺院。
全長46m・高さ15mの巨大な寝仏像が有名で、タイ旅行では定番の観光地。
境内には歴代国王の墓がある。
医学書が刻まれたワットポーの石碑は、一般の私たちも見ることができます。
1990年代にラーマ9世(故プミポン国王)がワットポーにあるタイ伝統医学学校を視察したとき、タイ文化であるマッサージを世の中に広く教えることを提案されました。
それまでタイの各地で伝承的に伝えられてきたマッサージを体系的にまとめてマニュアル化することで、タイ古式マッサージが世界中に広まることになったのです。
(参考:リラックル )
簡略化して分かりやすくまとめられたタイマッサージが世界中で受け入れられて人気になっていったんだね。
タイ古式マッサージの効果
タイ古式マッサージは、現代医学においてもその実用性が認められています。
具体的には、高血圧、低血圧、冷え性、便秘、アレルギー、頭痛、糖尿病、生理不順、食欲不振、喘息など、その効果は60種類以上にものぼるそうです。
タイ古式マッサージは身体の凝りや疲れを癒すだけでなく、精神的なストレスを緩和することもできます。
▼タイ国の衛生省が公式に掲げる効能▼
凝り固まった筋肉をゆるめていくことで血流が促され、自律神経のバランスが整い、人間が本来持っている免疫力や自然治癒能力を高める効果があるとされています。
タイ古式マッサージの2大理論
タイ古式マッサージには2大理論があります。
①4大元素理論
ひとつめは4大元素理論です。
タイの伝統医学では、宇宙を「土」「水」「風」「火」の4つに分けて考えました。
そして、宇宙のなかに存在する私たち人間を「小宇宙」としました。
宇宙がこの4つから成り立っているならば、「人間(小宇宙)も4つから成り立ってるよね」と考えたのです。
4元素を人間の体に当てはめると、具体的に説明することができます。
- 土▶筋肉、骨、臓器 (物体として触れるようなもの)
- 水▶血液、リンパ液、汗、涙(液体のもの)
- 風▶呼吸、循環(流れ)
- 火▶体温、消化、代謝(化学反応的なもの)
この4つはさらに深く細かく分類できます。
この4元素のバランスがとれているとき、人間は「健康な状態」だとされているのです。
②10セン理論
ふたつめは「10セン理論」です。
タイ伝統医学では、人間の体には生命エネルギーが流れていると考えられています。
この生命エネルギーのことを「セン」と呼びます。
このセンは目に見えないもので、解剖学上確かめることはできません。
センは人体のなかに72,000本もあるとされています。
72,000本も!?
タイ医学では「それはちょっと多いよね」ということで、もっとも重要なセンを10本抜き出しました。
これを『10セン理論』と呼びます。
タイマッサージでは、エネルギーラインのなかでも特に重要な10本の「セン」に沿って施術していくのです。
生命エネルギーの流れが4大元素のバランスを保っているとされており、この10センをゆっくりと刺激することで、全身の生命エネルギーの流れがよくなるという考え方です。
- 主要な生命エネルギー10本を刺激する
- 全身の生命エネルギーの流れが良好になる
- 4大元素のバランスが整って健康になる
10センのうち6センが足(足裏~足の付け根)の部分に集中しているので、通常は足の部分のマッサージからスタートします。
そうか。
だからタイマッサージでは足を中心に施術するんだね!
タイ古式マッサージの特徴
タイ古式マッサージは普通のマッサージと何が違うの?
「全身ストレッチ」で効果が長く続く
一般的なマッサージでは、凝っている部分を局所的にほぐすことがほとんど。
いっぽうタイ古式マッサージは、全身の筋肉をストレッチしながら悩みの箇所にアプローチしていきます。
指・手のひら・ヒジ・ヒザ・足など、体の色んな部分を使って筋肉を刺激していきます。
タイ古式マッサージによってほぐれた筋肉は、約3週間ほどかけてゆっくり元の状態に戻っていくと言われています。
そのため揉み返しが起こりにくく、マッサージの効果が長く続くというメリットがあるようです。
(参照元:資格のマナビバ)
「2人ヨガ」呼吸方や瞑想法を含んでいる
タイ古式マッサージが整体などと違うのは、呼吸法や瞑想法を含んでいるという点です。
タイ古式マッサージには、ストレッチや呼吸を整えて精神を集中するといったヨガ的・瞑想的要素が多く含まれています。
そのため「2人ヨガ」「動く瞑想」とも呼ばれます。
セラピストとクライアントのあいだでエネルギー交流をするのです。
セラピストとクライアント双方にメンタルヘルス効果もあるんだね。
古代インド医学「アーユルヴェーダ」が影響
タイ伝統医学の理論には、古代インド医学アーユルヴェーダの理論が強く影響しています。
古代インドを発祥とし5000年の歴史を持つ。中国医学、ギリシャ、アラビア、チベットの医学にも影響を与えてきた。
人間のもつ自然治癒力を最大限に引き出し、 できる限り自然の法則に従って自然な方法で病気や痛みを取り除いていくという療法。
世界3大医学のひとつで、WHOが正式に推奨する東洋医学。
参照元:TTMA「アーユルヴェーダとのかかわり」
たとえばアーユルヴェーダでは、宇宙に存在する全てが「空」「風」「火」「水」「地」の5つの要素によって構成されていると考えられています。
タイ医学の「4大元素理論」によく似てるね!
タイ医学がインドを起源とする東洋医学「アーユルヴェーダ」の影響を明らかに受けていることが分かります。
タイ古式マッサージの2大流派「ワットポー式」と「チェンマイ式」
タイ古式マッサージはざっくり「ワットポー式」と「チェンマイ式」の2大流派があります。
この2つは何が違うの?
この2大流派の源流は同じですが、ワットポー式はバンコクのワットポーでまとめられたタイ伝統医学のタイマッサージ。
チェンマイ式は、かつてタイ北部に栄えていたランナー王国のランナー伝統医学のマッサージを受け継いだものです。
ワットポー式
- バンコクを中心に広まった(バンコク式・南部式とも呼ばれる)
- 世界的にもっとも知名度が高い
- 指圧を中心とした施術
- 簡潔で覚えやすい
- 施術時間は2時間ほど
ワットポー式はバンコクを中心に広まったマッサージスタイルで、世界的にもっとも知名度が高いです。
王族にしたロイヤルマッサージの流れを踏襲し、厳格に技が引き継がれてきました。
ストレッチよりも指圧メインなのが特徴です。
私が通っていたマッサージ学校もワットポー式でした。
チェンマイ式
- チェンマイを中心に広まった(ランナー式・北部式とも呼ばれる)
- 庶民的で形式にとらわれない
- ストレッチの技が多い
- 時間がかかる(2時間以上)
チェンマイ式は、タイ北部のチェンマイを中心に広まったマッサージスタイルです。
チェンマイスタイルはワットポー式に比べるとより庶民的で、形式にとらわれません。
また、ヨガのような体を伸ばすストレッチの技が多いことも特徴です。
チェンマイ式はワットポー式よりも施術時間が長く、2時間以上かかるのが一般的です。
タイ古式マッサージは現在も進化し続けている
この2大流派が誕生したのは、実は20世紀に入ってからのこと。
タイ古式マッサージの流派やスタイルは現在も進化を遂げていて、新しい流派がいくつも出現し細分化され続けています。
タイ政府認定スクールの修了証はどこまで有効か?
最後に、タイ本国で取得できるマッサージ修了証の有効性についても少し触れておきます。
私はバンコクのワットポーマッサージスクールに1週間通い、タイ文部省と保健省の認定の基本コースの修了証を取りました。
その資格って日本でも使えるの?
実はタイ古式マッサージは日本では正しいマッサージとして法的に認められてなくて、国家資格もないんだ。
タイで取った資格は基本的に日本ではあまり通用しないってことになるね。
タイ古式マッサージは日本の法律で定められた国家資格ではない
日本でマッサージ師を名乗って働くには、「あん摩マッサージ指圧師」「鍼灸師」「柔道整復師」などの国家資格が必要になります。
これらは治療を目的とした施術をするための資格です。
タイ古式マッサージは、日本国内の法律上、セラピスト業という扱いになります。分類では、マッサージ業ではありません。
日本においてマッサージ業を営むことができるのは国家資格を有する場合のみです。マッサージ業は、医療類似行為にあたりますが、これには国家資格であるマッサージ師の資格が必要です。
マッサージとは、身体をさすたっり揉んだりする行為のことですが、日本におけるマッサージ業とは、類似医療行為としてそのような行為の対価として金銭を得る業をいいます。
引用元:TTMA タイ古式マッサージ業界の知識
ということは、日本に帰ったらタイ政府認定スクール発行の修了証は使えないってこと?
タイで資格をとっても、日本の国家資格なしでマッサージ師を名乗ると違法になってしまうね。
とくに私みたいなマッサージ未経験者が1週間程度で取った修了証なら、趣味程度のスキルになるよ。
タイ政府認定の修了証は、タイ文化の象徴なのであって、決して本来のタイ古式マッサージという治療を教えているわけではない。そこを勘違いして、「タイの資格を持っているからプロだ」と考えてしまう日本人が多い。
引用元:タイ古式スクールガイド
リラクゼーション目的の施術はできる
治療目的ではなくリラクゼーションを目的とした施術であれば、国家資格がなくても店を開くことは可能なようです。
その場合は、タイのマッサージ学校に通った経験がひとつのスキル証明になるかもしれませんね。
「人の健康に害を及ぼさない、治療行為ではないマッサージについては『マッサージ』と呼び、その行為を下記の条件の下で行うことを認める」というもの。つまり、「治療行為でない事を明示」「あんま、マッサージ、指圧師でないことを明示」した上でなら、リラクゼーションを目的としたマッサージを行ってもよいということだ。
引用元:タイ古式スクールガイド
タイ古式マッサージは、医師法、薬事法などその他関連法規のグレーゾーンで仕事をしているわけで、法で守られた職業・分野に抵触しないように分をわきまえないといけない。民間資格セラピストの展望は、その一人一人の倫理観にかかっているのだ。
引用元:タイ古式スクールガイド
なんか色々とややこしそうだね。
もし将来的に開業を考えられている場合は、日本の法律も含めて詳しくリサーチされることをおすすめします。
私はタイ文化を学びたくてマッサージを習ったのですが、日本に帰ったら家族や友達にマッサージしてあげたいです!
まとめ
タイ古式マッサージは長い歴史のなかで人類が作り上げてきた英知であり、東洋医学の神髄と言えます。
そして現在も進化し続けているのです。
私自身、本場タイでマッサージを学んだ経験は人生の宝物だと思っています。
タイ古式マッサージが単なるリラクゼーションじゃない理由がよく分かったよ。
ボクも習いたくなってきた…♪
ぜひタイに来られた際は、本場のタイ古式マッサージを満喫してみてください。
さらに興味が湧いた方は、マッサージ学校に通ってみるのも楽しいのでおすすめですよ♡